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<読了>
『儚い羊たちの祝宴』著者:米澤穂信
レーベル:新潮文庫
今月3冊目。
去年7月に発刊された、ということでそんなに新しい本でもありませんが、一応、読む予定がある方はネタバレ注意。
いい意味で、薄気味悪くなる小説でした。
特にどの話(5編収録の短編集です)も、ラストの一行や、それに相当する文章で背筋が凍えつきます。
人って怖いなぁ、って。
1話目や2話目はかなり唐突に「人の悪意」が露になるため、いきなり堕ちた感覚になります。
反面、“文章の綺麗さ”から来る恐ろしさが美麗とさえ言えるもので、言い回しも上手いです。
一般小説の中でも昔ならではの文学に近くありながら、とても読みやすいもの。
“ちょっと身近から離れたところにあるような小説”を読みたい方にオススメです。
ではあとは、ネタバレ全開な各話ごとの感想を。
「身内に不幸がありまして」吹子お嬢様を独り占めすることを、心の底から、望んでいたのです。なんかもうあらゆる意味で救われない話。後味も最悪というか、なんか“色鮮やかな果実に期待してかぶりついたら、これ以上になく苦々しくて、手元に水もない”って感じでしょうか。
でも前半の手記は、手記であることを感じさせない文章でした。
「北の館の罪人」「あまりさんは、紫の手袋をしているのね。これもいずれ、赤く変わるわ」情緒的ミステリー。前の話とは正反対に綺麗に終わった……かと思いきやこのオチだよ!
“絵”のアイディアと、そのための道具探しという伏線が非常に上手いのと、絵について語っている彼の姿が美しすぎます。
「山荘秘聞」「これで、あなたの沈黙を買いましょう」しつこいまでに出てくる語り手の特徴がラストにつながります。ゾクッときます。
ミステリーとして割と真正面から描いている一話。視点が視点ですし、前半で一度話がぶつ切りになってるので、非常にわかりやすい話です。……で、ラストで騙されます。
どうせ結末は同じなのですが。
「玉野五十鈴の誉れ」「はい」1話目がラストで救われないなら、これはラストで救われてはいるけれど可哀想な話。
私はこの話が一番好きです。
誰もが一度は口にした、あるいは耳にしたあるフレーズが恐怖のモチーフとなって登場します。
意味に気付いた時、しばし目を見開いて固まることでしょう。
あとは、人の恐ろしさや冷たさ、機械質な部分が浮き彫りになる、哀しいお話。
「儚い羊たちの晩餐」わたしの無想に捧げられた、夢見る儚い羊たち。
悉く狩り尽くされ、あるいは一匹も残らない。……え? ってなる一話。
これも日記という形で物語が展開されるので、いいところでぶっつりと切れてしまいます。
4話目もそうでしたが、ある程度の知識があると、なお楽しめる話です。
んー……これはちょっとヒントが少ないので、私なりに解析する必要がありそうです。
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